幸せから遠い人

割と大きな道路の信号機の前で信号が変わるのを待っていた。

今日は風が結構心地よく吹いていたはずだが、その心地よさは

私にとって一瞬で不快感に変わった。

 

私の前にいた50代くらいのおじさんがタバコを吸っていたのだ。

しかしそのおじさんは携帯灰皿を持っていて、信号を待っている

間だけタバコを楽しんでいるといった体だった。今日は風が吹い

ていた。本来ならおじさんの周りにだけ流れるはずのタバコの煙

が風のせいで後ろにいた私にまで舞い込んできたのだ。

 

私はタバコを吸わない。ここでタバコが健康に及ぼす影響とかを

話すつもりはないが、吸わない私は瞬間的に受動喫煙する事に

なった。しかもその結構大きな道路の信号機の下で信号が変わる

のを待っている人は密着していてしかも数が多かったのだ。風の

向きしだいで私以外にも受動喫煙している人はいただろう。そし

てそのおじさんは信号が変わる直前に携帯灰皿にタバコをうつ

してタバコを楽しむのをやめた。

 

その姿を見て私はふと「幸せになれない人ってこういう人なんだな」

と思った。

 

自分では気をつけているつもりなのである。喫煙者としてのマナーを

守り、楽しんでいるはずなのである。しかしほんのちょっと意識を

周りに向ければ今日は風があるということに気がつくはずなので

ある。風があれば煙が遠く飛ぶことに意識が向くことが出来れば

信号機の下でどういう行動に出ればいいか、判断は変わっていたと

思う。しかも自分の横の人ばかりか風のおかげで自分の後ろに

まで煙がいってたとは到底意識がいっていないであろうその姿を

見ていて、私はそのおじさんの今までの人生が見えた気がして

きた。善人でいたいと思う人生をきっと自らの手でないがしろに

してきたであろうことを私は感じたのである。

 

自戒をこめて忘れないようにしたい一瞬だと思った。